日記「引出しの中」

遠い日のハテナ ダイアリーのように、、。

2023.11.10「9才・退院の日」

退院の日。父母と駐車場に向かっている自分に、これほど太陽が容赦ないとは思いも寄らなかった。
異様に眩しく、フラフラする。
アパートに帰ると、布団が敷いてあり、僕は横になって目を閉じる。
病院のベッドとは違う、母の用意した清潔な寝床。
とてつもなく安心して、夢の中に入って行く。
4歳から見舞われた小児喘息は、自分自身の形成に深い跡を残している。
それは、球体だとして、次第に小さくなり今はパチンコ玉くらいのイメージだろうか。喘息が治りかけた10歳ではドッジボールくらいの球体だった。
この球体には、ヒューヒューと風のような発作の音、横になる自分を凝視する母の瞳、遠足のバスを窓越しに見つめる自分、扁桃腺の恐ろしい手術、発作は止めるが副作用の酷い注射、併発するアトピー、レコード・ケンプの月光の音、バスの形、車輪、スピードメーター、深夜父の車で向かう病院、そして検査。このようなものたちがゴチャゴチャに粘土状になって固まっている。

そして今、それは微かなものになったが、おそらく自分が命を終える瞬間まで心の深いところにあり続けるのだと思う。
それはそれでOK。
本当のことだし、それがあるから自分なのだから。